TFOS DEWS II - Pain and Sensation 疼痛と知覚
Carlos Belmonte, MD, PhD1, , Jason J. Nichols, OD, PhD1, Stephanie M. Cox, OD, James A. Brock, D.Phil, Carolyn G. Begley, OD, MS, David A. Bereiter, PhD, Darlene A. Dartt, PhD, Anat Galor, MD, Pedram Hamrah, MD, Jason J. Ivanusic, PhD, Deborah S. Jacobs, MD, Nancy A. McNamara, OD, PhD, Mark I. Rosenblatt, MD, PhD, Fiona Stapleton, MCOptom, PhD, James S. Wolffsohn, FCOptom, PhD
TFOS DEWS Ⅱの疼痛と知覚に関する分科委員会によって指摘されているように、疼痛は侵害受容性と神経障害性のタイプに分類することができる。侵害受容性疼痛は、組織に対して実際に生じた傷害や切迫した傷害に対する反応として生じる。一方、神経障害性疼痛は、体性感覚神経系内の病変によって起こり、一般的には、病的疼痛または生物学的価値のない疼痛と呼ばれている。
ドライアイに関連する疼痛は、角膜および結膜を神経支配する三叉神経節(trigeminal ganglion:TG)ニューロンの末梢(神経)軸索を介して伝達される。それらは、角膜実質内において、角膜上皮下神経叢を形成し、その上行枝が角膜の表層上皮内で終結する。機能的には、知覚神経は、多モード侵害受容器ニューロン、純粋な機械侵害受容器ニューロン、または冷温受容体ニューロンに属する。多モード侵害受容器ニューロンは、通常、活動を休止しており、化学的刺激、機械的刺激、または温度刺激に反応する。傷害を受けている間に放出された炎症性メディエーターがそれらに対する感作に影響を与える。一過性受容器電位チャネルサブファミリーVメンバー1(transient receptor potential cation channel subfamily V member 1:TRPV1)は、知覚の伝達や多モード侵害受容器の感作に重要である。純粋な機械侵害受容器もまた、通常は静止状態で活動性がなく、恐らく、ピエゾ(Piezo)2またはその他の同定されていない変換チャネルを介した機械的刺激にのみ応答する。冷温受容体は、通常の眼球表面温度では神経活動電位を連続的に放出し、それぞれ冷却または加温によって基礎発射頻度を増大あるいは減少させる。一過性受容器電位チャネルサブファミリーMメンバー8(transient receptor potential cation channel subfamily M member 8:TRPM8)は、それらの主要な低温変換チャネルでもあり、浸透圧の上昇に敏感でもある。開瞼時の涙液蒸発は、眼表面の冷却と浸透圧の上昇を引き起こして、それによって冷温受容体の基礎活動を増強することになる。これは、冷温感受性の神経線維が涙液の基礎分泌と瞬目の反射調節に寄与しているという仮説に矛盾しない。
眼表面からの三叉神経節ニューロンは、三叉神経脳幹核複合体内の2つの空間的に離れた領域、すなわち、中間亜核(subnucleus interpolaris:Ⅴi)と尾側亜核(subnucleus caudalis:Ⅴc)の移行部(ⅤiⅤc移行部)および尾側亜核(Ⅴc)と(上部)第一頸髄(cervical spinal cord 1:C1)の接合部(ⅤcC1領域)に投射する。実際に、ⅤcC1領域が眼痛の感覚弁別的側面において支配的な役割を果たしていることが示唆されている。ⅤiⅤc移行部のニューロンは、明るい光によって惹起されて、眼表面の湿潤状態の変化によって活性化されている。ⅤiⅤc移行部における眼のニューロンは、感覚系視床と同様に、流涙(上唾液核)と瞬目(顔面運動核)を制御する脳領域に投射する。このため、ⅤiⅤc移行部における眼のニューロンは、眼表面の健常性維持において重要な役割を果たしていることが示唆されている。
主涙腺の分泌活動は、自律神経の交感神経および副交感神経によって調節されており、その神経活動は、眼表面を支配する知覚ニューロンからの反射の影響によって調節されている。副交感神経の方が交感神経よりも広範囲に支配している。副涙腺の神経制御についてはほとんど知られていないが、主涙腺と同じように制御されていると思われている。マイボーム腺の周囲にも神経が存在するが、マイボーム腺のホロクリン分泌(全分泌)の調節における感覚神経や自律神経やそれらの神経伝達物質の役割を検索した研究はない。ラットにおいては、角膜に存在する知覚神経の活性化が杯細胞からのムチン分泌を誘発するとされているものの、しかしながら、この反射反応に関与する遠心性神経の種類は同定されていない。複数の非神経系の過程により、重層扁平上皮細胞からのムチン放出が調節されているが、その調節に関わる神経や神経伝達物質は現在に至るまで同定されていない。
涙液産生の調節に加えて、知覚をつかさどっている眼表面の神経は瞬目行動にも寄与している(図4)。自然な瞬目は、少なくともその一部において、眼表面の冷温受容体の連続的な神経インパルス発射によって維持されており、この神経活動は、三叉神経節ニューロンと脳幹部におけるⅤiⅤc移行部ニューロンとの結合によって媒介され、その後に、顔面神経(第Ⅶ脳神経)の運動神経線維に投射されている可能性が示唆されている。侵害受容器の知覚入力は、まず、ⅤcC1領域のニューロンに投射されて、その次に、ⅤiⅤc移行部ニューロンへ投射されることで瞬目反射が起こり、瞬目の振幅や最大速度を決定することになる。
ドライアイでは、涙液分泌の減少は、角膜上皮を不利な環境にさらして、しばしば様々なレベルで炎症や末梢神経末端障害をもたらすことになる。炎症は、多モード侵害受容器または機械侵害受容器の感作を引き起こすことになるが、それは冷温受容体の活性を抑制することになる。しかしながら、実験的ドライアイでは、侵害受容器の神経線維の感作は限定的であり、角膜神経の形態学的変化と並行して生じる、冷温受容体の神経活動の持続的かつ異常な増加が最も顕著な神経障害となっている。これは、乾燥による神経障害が炎症よりも優位にあり、主として冷温受容体の神経末端に異常な活動を引き起こすことを示唆している。このような末梢神経活動の変化と並行して、脳幹部のⅤiⅤc移行部とⅤcC1領域の双方における眼のニューロンの反応も増強される。
図4 ドライアイにおける眼表面の乾燥や(種々の原因による)眼表面の炎症が、多モードまたは機械侵害受容器や冷温受容器(高背景低閾値:HB-LTタイプまたは低背景高閾値:LB-HTタイプ)への神経インパルスの増減をどのように行なっているか、についての一覧図
上記の変化は、同時に、涙液分泌や(自然や反射性の)瞬目などの変化と同じように、それとは別の(自覚症状を伴った)知覚を誘導することになる。
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